200A以上の電流で長時間溶接しても熱ダレが無く、高性能で使い勝手が良いのが水冷式のトーチケーブルです。
熱ダレが無いということは消耗品であるコレット*1やコレットボディ*2の耐久性も向上し、コスパも抜群に良いです。
ただし、下の画像のような使い方をしている場合は注意が必要です。
トーチの柄の部分からケーブルが垂れ下がったまま使用していると…、
徐々に表面の繊維がすり減って、中のチューブが見えてきます。このチューブが薄くて柔らかい素材で出来ているため、スイッチを入れるとチューブがぷくっと風船のように膨らみます。このまま使用し続けると『破裂⇒感電や故障』になるので、すぐにでも交換しなければなりません。
早速交換してみましょう!
TIG溶接機水冷式の構造
TIG溶接機は一般的に空冷式と水冷式に分けられます。
水冷式は水冷式専用のトーチケーブルと、冷却水をポンプで循環させる循環器から成ります。
【循環器】
【水冷式トーチケーブル】
冷却水であるクーラントをトーチケーブル内に循環させることにより、トーチケーブルが高温になるのを防いでいます。
始めは空冷式のTIG溶接機を使用していて、後から水冷式にすることも可能です。
~補足~
冷却水はカルキ取りをぶら下げておけば水道水でも大丈夫です。私の地域は雪国なので、凍結防止のためにメーカー指定のクーラントを使用します。
水冷式トーチケーブルの構造
水冷式トーチケーブルのカバーを外すと四つの配線が見えます。それぞれ単品で購入可能です。
①送給ホース
青いタグが目印。延長用のため袋ナットになってますが気にせずに。今回の交換部品その壱です。
②排水ホース
パワーケーブルと一体になっているため、送給ホースよりやや太め。往復で言うところの復路になります。今回の交換部品その弐。
③ガスホース
黒いタグが目印なので一目瞭然です。
④トーチスイッチ
ここからは交換手順になります。
通常ならば脚立等を使用して、循環器より高い位置にトーチを上げてクーラントを抜けば良いのですが、次に記載している交換手順は、循環器が高い位置にあり、通常の交換手順が困難な場合のもです。
交換手順
①電源をOFFに
②循環器内のクーラント(冷却水)を半分以上別の容器に移す
③トーチケーブル内のクーラントを抜く
④ケーブルカバーを外し、ホースを交換
⑤クーラントを戻す
⑥電源をONにして動作チェック
⑦ケーブルカバーを付けて完了
となります。
ポイントはクーラントを抜いてからの交換なので詳細を。
③のトーチケーブル内のクーラントをしっかり抜かないと、ホースを交換する際にビショ濡れになるのでエアーを使って確実にクーラントを抜きます。
画像のように⇩黒いリングを下げたまま上に引っ張ると青の給水ホースが外れます。
エアーガンを給水ホースに差し込みエアーを送ります。
すると、トーチケーブル内のクーラントが赤の排水ホースから出てきます。
クーラントを抜いたら、トーチボディの柄の部分を引っ張りホースの交換へ。
こちらは⇩送給ホース。
タケノコのような所にホースを奥まで差し込んで金具を締め付ければOKです。
こちら⇩は排水ホース。
袋ナットを締め付ければOKです。
ホースの交換が終わったら、クーラントを戻し電源を入れます。漏れや異常が無いかを確認し、ケーブルカバーを付ければ完了です。
最後に
機械や工具類においてメンテナンスは必要不可欠ですが、予算に限りがある以上何でもかんでも交換するというわけにはいきません。水冷式トーチケーブルを丸々一本交換するとなるとかなりの金額になってしまいます。
今回記載した内容は私の職場で実際に行っている方法です。少しでも経済的で効率の良い方法を模索しながら行っているので、もしかしたら多少の不備があるかもしれませんが、その時はご了承ください。
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