Project-Tig

右手にトーチ 左手に期待値を

アルミのティグ溶接~準備編~

「SSさんはアルミの溶接って出来ましたよね?今度アルミの製作物あるから。はい、これ図面ね。ヨロピコ♡」

ってな感じでアルミの製缶仕事が舞い込んできました。

いつものごとく少々強引ですが、このご時世、仕事があるのは本当にありがたいことです。

 

とは言え、アルミ溶接は数年前に薄板補修をしたくらいで、アルミの本格的な製作物は初めて。

 

そこで今回の記事は、アルミ溶接をするにあたっての必要な事項を、溶接する人のために、準備➯調整➯実践という流れで備忘録を兼ねてまとめていきます。

 

なので、「クリーニング幅」や「周波数」等の難しい専門用語や理論について知りたいという人は、正直、良くわからないことだらけなので、検索トップのサイトをご覧ください。

ところで製缶とは何ぞや?

タンク、水槽、橋梁、鉄骨、船舶、鋼板、形鋼などを、一枚の鉄板または一本の鋼材から加工、溶接し、形に仕上げることを「製缶」と呼んでいます。 

アルミニウムの特性

初めてのアルミ製作ということで、今までやってきたステンレスや鉄とアルミの違いを把握して挑めば、切断加工、溶接の作業が効率よく行えるので、大まかにコピペすることに。

①軽い

アルミニウムの比重は2.7。鉄(7.8)と比べると約3分の1です。
同じ体積ではアルミのほうがずっと軽くなります。

4mのアングル材一本がめっちゃ軽い。

②耐食性がよい

アルミニウムは空気中では、緻密で安定した酸化皮膜を生成し、この酸化皮膜が腐食からガードしてくれます。

しかしこの酸化被膜がアルミ溶接を難しくしている一つの要因になります。対策としては初期電流を200Aまで上げて溶接することに。詳しくは次回の調整編で。

③加工性がよい

アルミニウムは塑性加工がしやすく、紙のように薄い箔や、複雑な形状の押出形材を容易に製造することが可能で、かなり広い用途で使用されています。

ステンレスとアルミで同形のFB(フラットバー)4mを持ってみると、ステンレスの方がたわむことがわかります。粘りや柔らかさはステンレスや鉄の方がありそうなので、プレス加工する場合は割れに注意が必要になるかもしれません。

④電気をよく通す

現在では高電圧の送電線の約99%に採用されているそうです。

アルミと鉄の電気伝導率を比べてると、アルミのほうが3.5倍ほど優れていることがわかります。 

濡れた革手袋で溶接するときは、感電に注意ですね。

⑤磁気を帯びない

アルミニウムは非磁性体で、磁場に影響されません。この特長は、アルミニウムの他の特性と組み合わせて、パラボラアンテナ、船の磁気コンパス、などの計測機器、電子医療機器メカトロニクス機器などに生かされているということです。

ステンレスと同じで、穴開け加工にアトラは使えません。

⑥熱をよく伝える

アルミニウムの熱伝導率は鉄の約3倍。熱をよく伝えるということは冷えるスピードも速いということになります。アルミ溶接後は全体が高温になります。そのため皮手袋をしていても持てないほどアツアツになるので火傷に注意。

そのかわり溶接後の熱影響による歪みがステンレスに比べたら、ほぼゼロに近いので、製作しやすくなりそうです。

⑦ アルミは溶けやすい

ステンレスや鉄に比べて融点がかなり低いので、アルミの薄板溶接では100%感覚を研ぎ澄まさなければ一瞬で溶け落ちます。慣れてしまえば問題ないのですがビード形成も含めて練習練習。

  

アルミニウム

ステンレス

融点 ℃

約660℃

約1470℃

約1530℃

熱伝導率 W/m/k

237.0

16.0

80.3

 

アルミ専用溶接機の準備

鉄やステンレスは「直流」で溶接。
アルミ溶接では「交流」で溶接します。

 

ダイヘンのティグ溶接機では、

ティグ溶接機

⇧の画像のように INVERTER ARGO は交流に切り替え不可なので、アルミの溶接には使えません。

 

⇩の画像は INVERTER ELECON では、【直流or交流】の切り替え可能なので、アルミ溶接が可能です。

アルミが溶接できるティグ溶接機

 

アルミ溶接では純タングステンを使用

純タングステン

交流使用時には、他のタングステン電極では溶融飛散する可能性があるとのこと。

純タングステンは、電極の消耗が少なく、先端が溶融飛散することがないそうです。

ステンレスの溶接にはトリタン

今までステンレスの溶接にはトリタンを使用してきました。「トリ」とはトリア2%入りタングステンのことで、直流に限り、電極先端の耐消耗に優れているとのこと。

アークの集中性、安定性では純タンやセリア入りタングステンよりも優れていて、溶接歪みの少ない溶接が可能のこと。

どっちつかずのセリタン

セリア入りタングステンは交流でも溶融飛散することが無く、幅広い金属の溶接で使用可能。

ただし、対消耗性では純タンのほうが優れ、アークの集中ではトリタンのほうが優れているとのこと。 

  • アルミ溶接…交流TIG 純タン
  • ステンレス、鉄溶接…直流TIG トリタン
  • その他の金属溶接…交流、直流TIG セリタン

まとめるとこんな感じに。

 

今回はここまで。
次回は調整編になります。