Project-Tig

右手にトーチ 左手に期待値を

【溶接試験対策】ギャップ4㎜TIG裏波溶接の模範ピース作製

先輩…造船所勤務の溶接工。パチンコパチスロの資金は給料前借り

後輩…先輩と同じ会社の営業職。

 

お疲れ様です。 

 

 

おう、今日はどないしたん?

 

実はですね、こちらの工場に新しく配属される人の為に、溶接試験用ピースを作って欲しいんですよ。

 

 

溶接試験用ピース?

 

 

造船所ではJIS溶接試験ではなくNK溶接試験のカテゴリーなので、新規入場者の目的意識を明確にする為にも、試験用サンプルがあるとイメージしやすいですよね。

 

 

 

以前、アーク溶接で製作していただいた模範ピースがわかりやすい、と評判なんですよね。

 

これな。

 

NKアーク溶接試験用ピース
NKアーク溶接試験用ピース

 

 

けどな、俺、今週は忙しいねん。新台入替あるし。また今度な。

 

 

残念ですが仕方ありませんね。では社長にそう伝えておきま、

 

 

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助かります。

 

 

しゃあなしやで。

 

裏波溶接SUS316L 板厚6.5㎜

 

まずは材料か。

 

SUS316L

 

ステンレスのSUS316Lのプレートを準備して。

 

 

ステンレス開先処理

 

グラインダーで開先加工を。

 

 ステンレス開先処理

 

 

 

板厚チェックと、

 

SUS316L

 

 

6.5㎜か。

 

ステンレス溶接ギャップ3㎜

 

とりあえずギャップは3㎜で仮付けして、専用の治具にセット。

裏波ガスは10Lに設定。

 

ステンエス裏波溶接試験用治具

 

 

ノズルはいつも通りに8番を。

タングステンは5㎜出して、溶接ガスは10Lと。

 

ティグ溶接ノズル

 

 

ギャップとは?

板同士の隙間の事をギャップと呼んでいます。

他には「ルート間隔」と呼ばれたりもします。

 

開先ルート間隔

10‐15 「開先」を正しく理解する - Project-Tigより抜粋

 

画像は「裏板あり」ですが、今回は「裏板無し」で解説を進めていきますので、最後までよろしくお願いします。

 

①【失敗例】初層ギャップ3㎜ 

【溶接条件】

  • 電流 100A
  • 溶棒 Φ2.0
  • ギャップ 3㎜
  • 開先角度 30°

 

 

溶接中の角度はこのくらい。5㎝ほど溶接して裏をチェック。

ティグ裏波溶接



 

裏を見ると、

 

 

ティグ裏波溶接



 

 

げ!裏が出てないやん!

 

 

ティグ裏波溶接



 

もうちょい電流上げとくか。

次は電流110Aで。

 

 

 

 

ティグ裏波溶接



 

今度こそ裏波が、、、

 



ティグ裏波溶接

 

 

あるぇ~、これでも出ないか。

 

 

ティグ裏波溶接

 

ほとんど溶けてない。

 

裏波が出ない原因は何でしょう?

電流上げても裏が出ないってことは、電流が弱いかギャップ不足が原因か。

 

次はギャップを広げるか

 

②初層ギャップ3→4.5㎜ 

 

ステンレスNK裏波溶接試験用ピース



 

思い切ってギャップ4.5㎜でリベンジ!

 

 

ステンレスNK裏波溶接試験用ピース



 

トーチの角度はなるべく立てて。

 

 

ステンレスNK裏波溶接試験用ピース



 

どれどれ。

 

 

ステンレスNK裏波溶接試験用ピース



 

キタ━(゚∀゚)━( ゚∀)━(  ゚)━(  )━!!!!!ウェイ!

 

 

ステンレスNK裏波溶接試験用ピース





この調子で進もう。

 

 

ステンレスNK裏波溶接試験用ピース



 

悪くないんやけど、最後の方はどうしてもギャップが狭まるな。

 

 

ステンレスNK裏波溶接試験用ピース

 

次は真ん中にも1箇所増やして、仮付けでガッチリさせとくか。

 

初層の運棒 その壱 ハナハナ送り

 

ここで一旦、運棒法について説明します。

ギャップが大きい時の運棒は2種類あって、一つ目はハナハナ送り

 

ステンレスNK裏波溶接試験用ピース運棒法
ステンレスNK裏波溶接試験用ピース運棒法
ハイビスカスを狙い交互に棒を送る

 

両端の開先にあるハイビスカスめがけて、交互に棒を送ります。

 

 

裏波溶接溶接棒の送り方
裏波溶接溶接棒の送り方


 

棒が途切れやすいので、初めての人は次に紹介する「ジャグ送り」がおすすめ。

 

初層の運棒 その弐 ジャグ送り

 

ステンレスNK裏波溶接試験用ピース運棒法

 

ジャグラーでお馴染みのGOGOランプを狙って棒を送ります。

溶融プールが溜まったらノズルを②へゆっくりと広めに振り、元に戻す。これを繰り返します。

 

裏波溶接溶接棒の送り方
裏波溶接溶接棒の送り方

 

運棒の操作が簡単なので初めての人はジャグ送りから始めてみましょう。

  

 

次は2層目、3層目の解説に入ります。

2層仕上げの場合 180A Φ3.2

 

ステンレスNK裏波溶接試験用ピース



 

2層目で仕上げとなると、Φ3.2の棒で送りを多めにする必要があります。

電流は180Aと、ちょい強め。 

 

 

ステンレスNK裏波溶接試験用ピース

 

 

3層仕上げの場合

 

Φ3.2の棒の送りが苦手な人は、3層目で仕上げても大丈夫です。

 

ステンレスNK裏波溶接試験用ピース


 

2層目では電流を170AでΦ2.6を使用。

 

2層目は3層目の事を考え、電流を強めにして表面をなるべくフラットに仕上げます。

 

 

3層目は170AでΦ3.2で溶接します。

 

 

 

2層目、3層目の溶接中の詳しいポイントは、この先にある「溶接姿勢Vの裏波溶接」の項目をご覧下さい。

 

 

失敗した溶接ピースは再利用

 

裏波全部溶接してしまうと、ギャップの詰まりがわからなくなるから、これはボツやな。

ステンレスNK裏波溶接試験用ピースギャップの詰まり

 

 

スクラップにするのはもったいない。

 

 

溶接試験切断

 

 

というわけで、バンドソーでまずは角度切り。

 

 

 



 

からの真っ二つに切断。

 

 

 

アセトンで拭いてOKと。

 

 

鋼材も値上がりしてるからな。熱影響部を除いておけば次も使えるやろ。

 

 

せっかくだからV(溶接姿勢の縦付け)も作るか。

 

溶接姿勢Vの裏波溶接

 

 

NKステンレス溶接試験縦向き



 

やっぱジャグ送り最強。(俺はハナラ―やけど)

 

NKステンレス溶接試験縦向き

 

 

NKステンレス裏波溶接試験縦向き



裏波アップ!

 

NKステンレス裏波溶接試験縦向き



 

2層目は赤いラインまで盛ると、3層目が楽になるよ。

NKステンレス裏波溶接試験縦向き


 

 

こんな感じ⇩

 

NKステンレス裏波溶接試験縦向き




NKステンレス裏波溶接試験縦向き

 

 

迷子にならない為にも、2層目で両カドは残す事。

 

3層目ではこの両カドを目安に溶かしながら進めば、安心して振れるよ。

 

 

NKステンレス裏波溶接試験縦向き


 

NK裏波溶接試験用模範ピース完成

 

①F(下向き)2層盛り

 

2層目はΦ3.2で1発仕上げ。 

ステンレス溶接試験下向き二層盛り



 

 

裏波は、、、

 

NKステンレス裏波溶接試験用ピース



仮付した箇所は欠陥が出やすいので溶け込みが甘くなるから、ゆっくり進めばOK。

 

②F(下向き)3層盛り

棒の送りが苦手な人は3層盛りでOK。


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NKステンレス裏波溶接試験用ピース

参考までに悪い例も書き込む。

 

 

NKステンレス裏波溶接試験用ピース

③V(縦付け)3層盛り

 

SUS316Lってホント垂れにくいよね。

 

ステンレス溶接試験縦向き

 

 

裏波のガス流量は10Lでしたが、途中から15Lに調整してます。。

 

 

ステンレス溶接試験縦向き

 

言われなくても縦向き姿勢Vまで作ってしまうこのサービス精神。自分に拍手!

 

 

おっしゃーーー!仕事も終わったし、打ちに行くか!

 

 

 

 

 

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