Project-Tig

右手にトーチ 左手に期待値を

1‐09 溶け込みを把握する

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溶接技術において重視すべき項目の中に、「溶接金属の一体化」が挙げられます。
溶接により金属と金属が完全に溶け込んで、強度や耐久性を向上させます。

 

ただ…、溶接の溶け込み深さって分かりにくい、、、

どんなに外観が素晴らしいビードでも金属の中が溶けていなければ構造的に溶接欠陥なり、検査結果は満足しないものに。

 

見ただけでわかる

 

画像はすべてSUS316L(サスさんいちろくエル)です。 

練習用ピースの製作

余ってる鋼材でいいのですが、バンドソーで切断可能な幅の鋼材を使用しましょう。 

仮付け

TIG溶接ステンレス鋼仮付け

 

本溶接

TIG溶接ステンレス鋼すみ肉溶接

 

 

切断

ステンレス鋼を切断

 

ステンレス鋼を切断


 

サンドペーパーで磨くと見やすくなります。

TIG溶接ステンレス鋼溶け込み画像

 

例① 溶けている状態 

TIG溶接ステンレス鋼溶け込み画像



溶接部と母材との間に隙間がありません。  

TIG溶接ステンレス鋼溶け込み画像

開先は取っていませんので部分溶け込みとなります。

 

例② 溶けていない状態

〇に注目! 

TIG溶接ステンレス鋼溶け込み不足画像



TIG溶接ステンレス鋼溶け込み不足画像



溶接部分と鋼材との間に隙間が見えます。  

TIG溶接ステンレス鋼溶け込み不足画像

奥まで溶けていないのが一目瞭然。 

溶け込み不良です。 

 

 

脚長が大きくなると尚更です。

TIG溶接ステンレス鋼溶け込み不足画像

溶接中に溶け込みの感覚がわかれば、より確かな技術の習得に繋がります。

 

 

例③ 半自動溶接 

ステンレス鋼を切断

 

 

半自動溶接ステンレス鋼溶け込み画像

 

 

コチラは隙間がなく、溶け込んでる状態。

半自動溶接ステンレス鋼溶け込み画像

※画像は全てSUS316Lです。

 

最後に

JIS溶接試験合否判定は外観及び曲げ試験となっていて、曲げ試験では、不完全溶け込みだと割れの原因となり、不合格になる場合があります。 

カテゴリが違いますが、造船内でのNK溶接試験(日本海事協会)では、一層目の溶け込み不足で不合格になる場合が圧倒的に多いです。 

私が過去に美しすぎる溶接ビードはいかがですか?をアップしましたが、これは外観的なこと。外観も大事な要素ではありますが、溶接の本質は溶け込みにあります。

 

強度はもちろん、金属疲労や耐圧、腐蝕等の厳しい環境下で長期間品質を維持するには、溶け込みは欠かせない要素です。

 

溶け込み深さは数をこなせば感覚的に掴めることなので、JIS溶接試験合格を目指している方は、是非とも溶け込みを普段から意識して溶接してみてください。 

 

 

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