溶接技術において重視すべき項目の中に、「溶接金属の一体化」が挙げられます。
溶接により金属と金属が完全に溶け込んで、強度や耐久性を向上させます。
ただ…、溶接の溶け込み深さって分かりにくい、、、
どんなに外観が素晴らしいビードでも金属の中が溶けていなければ構造的に溶接欠陥なり、検査結果は満足しないものに。
見ただけでわかる
画像はすべてSUS316L(サスさんいちろくエル)です。
練習用ピースの製作
余ってる鋼材でいいのですが、バンドソーで切断可能な幅の鋼材を使用しましょう。
仮付け
本溶接
切断
サンドペーパーで磨くと見やすくなります。
例① 溶けている状態
溶接部と母材との間に隙間がありません。
開先は取っていませんので部分溶け込みとなります。
例② 溶けていない状態
〇に注目!
溶接部分と鋼材との間に隙間が見えます。
奥まで溶けていないのが一目瞭然。
溶け込み不良です。
脚長が大きくなると尚更です。
溶接中に溶け込みの感覚がわかれば、より確かな技術の習得に繋がります。
例③ 半自動溶接
コチラは隙間がなく、溶け込んでる状態。
※画像は全てSUS316Lです。
最後に
JIS溶接試験合否判定は外観及び曲げ試験となっていて、曲げ試験では、不完全溶け込みだと割れの原因となり、不合格になる場合があります。
カテゴリが違いますが、造船内でのNK溶接試験(日本海事協会)では、一層目の溶け込み不足で不合格になる場合が圧倒的に多いです。
私が過去に美しすぎる溶接ビードはいかがですか?をアップしましたが、これは外観的なこと。外観も大事な要素ではありますが、溶接の本質は溶け込みにあります。
強度はもちろん、金属疲労や耐圧、腐蝕等の厳しい環境下で長期間品質を維持するには、溶け込みは欠かせない要素です。
溶け込み深さは数をこなせば感覚的に掴めることなので、JIS溶接試験合格を目指している方は、是非とも溶け込みを普段から意識して溶接してみてください。