用意したのは種も仕掛けもない仮付け後のステンレスベースプレート。
ご覧のとおり、ベースは真っすぐですね。
サクッと溶接♡
すると、あら不思議。
冷めた後、もういち度差し金をあてると、、、
隙間が空いているのがおわかりでしょうか?
これを、歪(ひず)みといい、溶接後には必ず起こる変形現象です。
厚さ9㎜のステンレス。この時の歪みは1~2㎜程度で済んでいますが、何も知らずに溶接していたころは3㎜以上の隙間がありました。
歪みの大きさというのは、溶接時の熱量に大きく左右されるので、熱量を気にせず溶接すると弓状に反り返ったベースプレートになってしまいます。
ちなみに軟鋼(鉄)での歪みは、ちょい少なめです。ステンレスの方が熱伝導率が低く、熱がこもりやすいので歪みが大きくなると覚えればOKです。
画像のような一品ものであれば、歪みによる影響はそれほどではありませんが、人が入れるような大きさの箱モノやタンク等を適当に溶接してしまうと、箱全体がねじれてしまって使い物にならない⇒スクラップ、なんてこともあります。
お分かりになっている方もいるかと思いますが、溶接技術は、溶け込みが良く綺麗な溶接ビードを成形する事も大切です。しかし、溶接による歪みを最小限に抑える溶接技術の方が重要になるケースがはるかに多いです。
溶接は常に歪みとの戦いです。
ステンレス溶接で歪みを少なくする方法はいくつかあります。思いつくところでは、
- 溶接スピードを上げ必要最低限の脚長にする(板厚大中程度)
- 薄板ではティグ溶接のパルスを使う
- 開先角度は極力小さくして、溶接金属量を少なくする
- 熱を集中させないように、溶接個所の順番を工夫する
- 拘束ジグを使用する
- あらかじめ逆方向に曲げておく
といったところでしょうか。
しかし、上記のポイントを全てクリアしたとしても歪みが完全に無くなることはありません。むしろ歪みが必ず発生するものならば、発生したひずみを解消させればいいわけです。
歪みの主な解消方法は、
- 打撃で元に戻す
- 電動油圧ジャッキで元に戻す
- ガスバーナーであぶる
私の職場で一番効率的なのは「電動油圧ジャッキ」です。専用のジグをはめ込みジャッキをセットすれば、あっと言う間に歪みは解消されます。
1の打撃は非常に根気のいる作業になります。
3のガスバーナーは最終手段。鉄板を炙って曲げるギョウ鉄のような、感覚に頼るところが大きく難易度が高め。また、ステンレスを炙ると組織が硬化してしまうので極力避けてます。
『今まで歪みなんて意識していなかった』なんて人は是非とも「歪みの少ない溶接方法」に挑戦してみてください。間違いなく溶接の腕は上がります!