せっかく若い人が会社に入っても、なかなか仕事を覚えなかったり、仕事を覚えて一人前の職人になった頃に辞めてしまう。
厳しい職人の世界ではよく耳にする話です。
私は高校卒業後、建設業で4年ほど、そして鉄工所などの製造業で15年以上働き続け、一応職人と呼ばれるようにはなりました。
その間、人材不足の製造業で若い人がせっかく入ってきても、すぐ辞めてしまうサイクルを何度も目にしてきました。
なにかとすぐに「最近の若いやつは…」と、若い人たちを責めますが、彼らにもちゃんとした理由があるんですよ。
私も同じような経験をしてきましたし。
そこで今回は、製造業で「若い人たちが育たない、なぜか辞めてしまう」と感じている管理職や、教育担当の人の参考になればと思い、工場勤務の視点からまとめたので紹介します。
【目 次】
- 新人教育に時間を使わない
- 教える側のスキルがない
- ミスると頭ごなしに怒鳴る
- 大声を出す
- 一向に給料が上がらない
- 新人教育がサボり?
- スマホがある
- ルーティンワークがきつい
- 古いやり方を押し付ける
- やる気ゼロを連れてくる
- 最後の砦がキレる
- 最後に
新人教育に時間を使わない
職人の世界は、扱う材料の種類や機械の種類など、覚えなければいけないことがメチャクチャ多いです。
作業するときは、工場内のルールや保護具などの装備品、設備品の点検もあるわけだし。
何の心構えもさせずに「やりながら覚えろ」は、すぐ行動に移せない新人を挙動不審にさせます。
【入社⇒即作業】
これ無理があるでしょ。
何も知らない新人を任された若い職人は、大抵自分の仕事を抱えています。
何もわからない素人相手に説明したとしても、一回で出来るわけもなく、時間が経てば新人を放置してしまいます。結局は自分がやった方が早いですからね。これではお互いにストレスが生じる負のスパイラルです。
時間を使って、ある程度の基礎教育は済ませてから作業に入ったほうが、スムーズに、そして長い目で見ればプラスに働きますよ。
それができる会社だったら、苦労ないんですけどね。
教える側のスキルがない
ここが一番の問題。
今まで見て覚えろの世界で働いてきた人は、自分がなぜ上手く出来てるのか知らない人だらけ。知らないので教えられないし伝えられません。
若い人が質問しても、教え方がわからないので「そんなこともわからないのか!」とキレて誤魔化します。
んで、説明したかと思うと、為にもならない長いムダ話を最低3回は繰り返します。リピート機能?
入って間もないオドオドしてる新人に、説明も無しにあれこれ指示して、結局「見て覚えろ」が多すぎるんですよね。
「見て覚える」は技術の説明が終わってからでも充分間に合います。
教え方が上手で、聞く耳を持ってる人は、職場では人望がありますよね。
ミスると頭ごなしに怒鳴る
製作ミスなんかしたときに、何が原因でミスったのかを、本人の口から言わせるように導いてあげなければ、また同じミスを繰り返します。
自分で考える時間を与えずに、いつも頭ごなしに怒鳴ると、若い人自身が「自分はダメな人間だ。ここには必要とされていない」と思ってしまいます。
若い人の性格や能力を見極めることをせずに、誰彼構わず怒鳴る上司は、見てる方が痛々しい。
ちなみに、若い頃の現場で、タバコの「マイルドセブンライト買ってこい」と言われて、マイルドセブン持ってったらメチャクチャ怒鳴られました。
タバコ吸わないから知らんがな。
大声を出す
私も初めはビックリしましたが、工場内は時折、金属加工する機械やハンマーの打撃音の反響が大きく、普段の会話が聞き取れないほどです。
説明する声が大きくなるので、慣れる前に至近距離で聞くと「俺、怒られてる?」となります。
一向に給料が上がらない
最初は未経験なので安いのはわかりますが、1年経っても給料増えず。さらに1年経っても変わらず…。もう一年経ってバリバリの稼ぎ頭になるも一日当たり数百円しか上がらず。
「他社の方が給料高いので…辞めます…」
そりゃそうだ。
10年以上の職人と、1年目の新人が同じ額ってどういうこと?
給料上がるとモチベーションも上がりますよね。
新人教育がサボり?
防犯カメラという名前の監視カメラがある工場でした。
作業する上での説明を、緊張気味の新人に笑いを混ぜながらしていたら、後から「あのとき笑って喋っていたろ」だって。
立ち話を一方的にサボりと決めつければ誰だって嫌になりますよ。
こんな職場で働きたいと思いますか?
嘘でも「防犯カメラの向こうには若い事務員さんが見てるよ」とでも言ってくれたほうがあの頃は頑張れたと思うよ。
工場での仕事=生産性のみを上げることといった風潮が年配の人に多く見られるからなんですよね。
スマホがある
これも大きいですね。
「転職、求人」 で検索すれば良くも悪くも甘いキャッチフレーズで、気が付けば面接の申し込みまで、小さなスマホ一つで出来ちゃうんだからすごい時代です。
特に若いときは、隣の芝生がやたらめっぽう青く見えるますから。そんなときに職場の空気が微妙だと、自分はこの職場にいなくても良いのでは?と考えます。
せっかく入った会社だからすぐに辞めないだろう、なんて思ってるのは、若いときにスマホが無かったオッサン連中だけ。もしオッサンの若いときにスマホがあったら半分以上は転職してるんじゃないかな。
私も含め、、、多分ね。
と、こんなことを言われないためにも、若い職人が魅力を感じる職場づくりは会社全体で取り組みたいですね。
顧客満足度も大切ですが、従業員満足度も大切です。
ルーティンワークがきつい
仕事に慣れてくると同じことの繰り返しに飽きてしまい、モチベーションが上がらなくなります。
ローテーションを変えたり、本人の性格を踏まえて他の職人と組ませる、などの新しい刺激を与えないと辞めてしまう傾向に。
そんな理由で簡単に辞めるの?
自分じゃなくてもいい仕事は、時に魅力的じゃないんですよ。
そんな理由だから辞めるんです!
「俺はもっとできる」のサインに気付かぬフリは、向上心を前面に出す若手職人の心をポッキリ折ることに。
古いやり方を押し付ける
昔からの同じやり方にこだわり若い人に押し付けます。
ティグ溶接の技術を必要とする職場で、「ローリング」という技術があるんですが、初日の朝の始業開始から、夕方の終了まで延々とローリングの練習させられてた新人がいた、と聞かされたときはゾッとしました。
ヘタすれば腱鞘炎になることもお構いなし。
ぶっちゃけローリングは溶接効率が悪く、浮かして溶接した方が早いのも知らずに、教える方はドヤ顔です。
私自身がTig(ティグ)クエストを作ったのは、こういった無駄の多い教え方があったからです。教える方も教わる方も効率良くやりたいですよね。
やる気ゼロを連れてくる
常用契約中心の社長に多いです。
1日(8時間)居れば、親会社から決まった額が入ってくるので、とにかく誰でも良い、という理由で連れてきます。
初日から、具合が悪いの?と思うくらい目が死んでてもですよ?
ホントに面接したの?
やる気スイッチが全く見当たらない!
やる気ゼロの新人を職人に育てろと言われてもムリっす!社長への不満が新人に向けられます。
経営陣が目先の利益に目が眩むと、若い職人が本当に苦労します。
せめて20分以内にトイレから返ってきてくれ!
最後の砦がキレる
ミスして怒鳴られた若い職人が顔を赤くして上司へ一言。
「今日で辞めます!」
間髪いれずに
『はぁ💢とっとと辞めてしまえ!』
勢いで言ってしまったとはいえ、少し落ち着かせて話を聞くこともせず、キレて捨て台詞とか本気ですか?
納期は3日後ですよ。
チームや会社のことを考えれば、言いたいことを押し殺してでも若い職人を引き留め、まずは話を聞くのが上司ですよね。
自分の感情をコントロール出来ない人が上司なんて、上司の人選間違ってませんか?
若い職人の損失は会社の損失。
粗削りでも有能な新人を辞めさせないで。
最後に
高度経済成長ど真ん中の人材が溢れていた時代は過ぎ去り、今や売り手市場。会社側が選ばれる時代になりました。
つくづく時代が変わったんだと感じます。
この先ヤバイと感じて、若い人達が入ってもすぐ辞めるような、職場環境を改善する人がいたとして、上司の圧でなかなか表に出てこないケースもあります。
「若い職人は会社の財産です」
と、会社側はより一層ハッキリさせるべきです。
一人前に働いてるのに普通に生活できないなんておかしいよね?
まだまだ紹介したいことはたくさんありますが、長くなるのでこの辺で。
若い職人達を守るためにも、膝をついて相手の目線に合わせる努力を忘れたくありません。