メッキ材を溶接するとなると、思わず「え~っ」と、ブーたれてしまうほど、溶接しにくい鋼材でお馴染みのメッキ溶接。
このメッキ溶接が今回のテーマです。
ただでさえ溶接しにくいメッキ材を、被覆アークや半自動ならまだしも「ティグ溶接するぜぃ!」って言っても、たいていはドン引きされる羽目に。
嫌われもののメッキ溶接
メッキの溶接が嫌われる要因はスパッタや溶接ヒュームなどがありますが、なんと言っても溶接後のピンホール。ピンホールは溶接欠陥の一つで、溶接中のガスが原因でビード表面に小さい穴やミミズが這ったような痕が出来るんです。
これは半自動溶接。細かい穴がポツポツと明いています。
そしてもう一つ、メッキ溶接が嫌われる最大の原因が、めっちゃ跳ねること。
ティグ溶接でもグラインダーで剥がし損ねたメッキが残っていれば、それはそれはアツアツに熱してるポップコーンくらい元気にパパパパンパンって跳ねるんです。
ドロドロに溶けてる鉄がパンパン跳ねるので、作業着に穴が出来るし、ノズルやタングステンがむざんな姿に。
メッキ材の中身は鉄そのもので、鉄の表面をメッキがコーティングしている状態です。
トンカツで言えば肉の部分が鉄で、衣部分がメッキといったところですね。錆に対する防御力が「ロトの盾」ぐらいある。
この衣がえげつないほどの白い煙(溶接ヒューム)を吐き出します。体にも悪い煙なので防塵マスクと換気がデフォ。
被覆アークや半自動溶接では、溶接中に衣部分であるメッキを前後にウィービングして吹き飛ばしながら溶接するわけです。ピンホった箇所は補修しなければならないので、欠陥が出たときは一旦グラインダーをかけてから溶接したり、そのまま重ねて溶接したりします。
メッキをティグ溶接する場合
じゃあメッキをティグ溶接する場合ではどうするのかといえば、衣であるメッキをグラインダーで綺麗に削ります。
ここで肝心なのが、溶接ビード箇所だけでなく、溶接熱の影響部分のメッキを削るということです。
例えばティグ溶接でメッキのアングルをこんな感じに合わせたいときは、
溶接部分の周辺にグラインダーをかけて、表面のメッキを削ります。
溶接による熱影響部にグラインダーをかけると、パンパンせずに済みます。
一口に「メッキ」といっても、仕入れ先のメッキ工場によってメッキの厚みが違うんだよなぁ。
なのでグラインダーをかけてメッキを削った後は、間近まで顔を近づけて、メッキが残っていないか確認します。
うっすらと白く残ってればやり直し。
パパパパンパンは勘弁してください、、、
さすがに、75㎜のメッキアングルをティグ溶接する機会はあまり無いかもしれませんが、アークや半自動が使えなくて「あるのはティグ溶接機だけ!」といったケースや、「うちの工場は、ちょっ火花NGなんで、ティグ溶接onlyデス」といったケースには、、、そんなケースあるのか?
メッキ溶接ギャラリー
造船所では錆びに強い特性を持つメッキ加工が数多くあり、半自動溶接後にスパッタ処理するよりも、「メッキ部分をグラインダー処理➯ティグ溶接」のコンボの方が結果的に作業効率が上がる場合がありました。
あまり需要は無いかもしれませんが、「メッキをティグ溶接する」を備忘録として残しておくことにします。
最後に肝心なとをひとつ。
メッキ溶接は防塵マスクと換気必須
メッキを半自動や被覆アークで溶接すると、えげつないほどのヒュームが発生するとお伝えしました。それはそれはもうホントにえげつないほどの煙。
このヒュームを大量に吸い込むと「急性亜鉛メッキ中毒」になります。
先日、人生で二度目のメッキ中毒になったときは、、、
朝から張り切ってメッキの仮付け&溶接➯夕方から倦怠感➯夜の9時頃に急激な寒気が襲う。
「あ、やっべ。マスクしてたし送風機で換気しててもこれか、、、防塵マスクのフィルター交換すればよかったかな」
自分の不甲斐なさを呪う➯腹にグッと力を入れて寒気を押さえつつ寝る➯翌朝復活!
前回は寒気で奥歯がガタガタ震えた記憶があったので、今回は軽い症状なのかな。
溶接中はメッキ特有のえげつない溶接ヒュームが発生するので、溶接箇所が見えにくく、つい顔を近づけ過ぎてしまったのが原因かと。
翌朝にはケロッと治るので心配はしませんでしたが、翌日も寒気や発熱が続くなら病院へ行くのをおすすめします。
くどいようですが、メッキ溶接のポイントは
- 防塵マスク(フィルターを1~2時間ごとにエアブロー)
- 防塵マスク(もったいないと思わずにフィルターを交換)
- 顔を離して溶接
- 換気
- 換気
- 換気
メッキは今後ともちょくちょくお世話になるので、理解を深め、仲良くしなければなりませんね。
ではでは、より良い溶接ライフを!