安全教育で、「じん肺」についての動画を観たんです。
じん肺になった人の症状が非常に辛そうでした。
横に寝ると咳込んでしまうから壁によりかかる。壁によりかかると眠れない。結果、睡眠不足で以下悪循環。
その方は長年の粉じん作業が原因のようでした。
溶接作業においても、『長年溶接ヒュームを吸い続ければじん肺になる』と聞いたことはあるかと思います。
今回のテーマは、知ってるようで知らない溶接ヒュームの有害性についてです。
溶接ヒュームってなんぞや?
アーク熱によって溶かされた金属の高温蒸気が大気中に放出され、急速に冷却されて出来た固体状の粒子の事。
…うん。
わかりにくい。
簡単に書くと、バチバチ溶接して発生した「煙に見えるもの」の事。
冷えて固体になる、というのがポイント。
溶接ヒュームの大きさ
ヒュームの発生直後は0.1㎛(マイクロメートル)程度の極めて小さい粒子ですが、その後一次粒子が凝集して、1μm前後の二次粒子になるようです。
1㎛ってどの位?
0.5mmのシャープペンシルが500μmだから、これの1/500。
50μmだと小麦粉、片栗粉があって、これの1/50。
ちなみに2020年の今、世界中に影響を及ぼしている新型コロナウイルスのような「ウイルス」の大きさは0.025~0.35㎛
「細菌」の大きさは0.5~0.1㎛
、、、、
目には見えんということだな。
この溶接ヒュームの大きさがヤバい
人がヒュームを吸入すると…、
- 5μmを超えるものは、鼻毛や器官のせん毛で取り除かれる。
- 0.5μm以下は、肺に入っても体外に吐き出される。
- 0.5~5μmは、肺に入って末端の細胞に沈着し、人体に影響を及ぼす。
とあります。
簡単にまとめると、
ヒュームは上に行くからそんなに気にしなくてもいいじゃね?
と思っていたんですが…、
金属が溶接で蒸発し気体となる
⇩
空気中で冷やされ固体に
⇩
フワフワ空気中を漂う
⇩
人体の肺の奥に入りこむ
⇩
ヤ バ イ
0.5~5μm程度のヒュームの場合、一度体内に入ったら排出はされず、蓄積される一方。
換気されてない屋内や工場内では目に見えていないだけで、そこら中にあると思うのが自然です。この停留するヒュームを換気する事が重要な課題となります。
もう一つ肝心なことは、一般的に販売されている簡易マスクですが、布の部分の大きさが5㎛までなので、5㎛以下である溶接ヒュームを防ぐ事は出来ません!
溶接ヒュームの健康障害
ヒュームを多量に吸入した時に生じる障害は、吸入後短時間に生じる急性症状と、長期にわたって蓄積された結果生じる慢性症状に大別されます。
金属熱
代表的な急性症状の一つ。
作業中からその日の夜までの間に、
- 全身のだるさ
- 関節の痛み
- 悪寒
- 頭痛、吐き気…
等の症状が出る。
じん肺
長期間吸入した結果生じる慢性症状にはじん肺があり、ここからが今回の最大のポイント。
じん肺の初期の多くは自覚症状が無く、検査によって障害の程度が確認されることが多いため、定期的な検診が必要。
じん肺について根治の記録はないようです。なので一度発症したら治らないということ。
じん肺が引き金となり様々な合併症を併発するため、絶対にかかりたくない病気の一つです。
じん肺には絶対なりたくねぇ…
というのも、成人してから突発的な喘息を患った経験があるんですが、喘息って呼吸が出来ないほど咳込むので睡眠不足が続くと「こんなに苦しいならいっその事…」と、一瞬頭をよぎるんです。
アレルギー体質で呼吸器系が弱点の私には、益々用心して取り組むべき健康障害の一つです。
とはいえ、職種柄、溶接ヒュームは避けては通れないもの。
じん肺のリスクを最小限にするには、換気と防塵マスク
が重要。
また、溶接ヒュームの他にも、切断や切削で発生する粒子状物質(粉じん)も、じん肺の引き金になる可能性があるので、以下の対策が必須。
溶接ヒュームの対策
屋内で行うアーク溶接作業は、「粉じん障害防止規則」で「粉じん作業」と定義されていて、作業の際には全体換気による換気の実施及び溶接作業者に対する呼吸用保護具の着用が義務づけられています。
主な対策は次の二つ。
全体換気装置の工夫
溶接後に発生したヒュームは上昇しますが、屋根の排気ファンの吸引範囲まで届かない場合があります。
この停留ヒュームを排除すべく、小型、中型の送風機を屋根の排気ファンに向けたり壁の換気扇に向けたりして、工場全体の空気の流れを確保します。
呼吸用保護具の着用
一般的なのが防塵マスク。
ただし、溶接作業で使用できるマスクは「国家検定合格標章」が貼り付けされているものに限ります。
防塵マスクを着用する際は以下の点に注意。
①フィットチェッカー等により密着性が良好かを確認する。
②「接顔メリヤス」基本的には使用しない。
③国家検定合格品であること。
国家検定合格品のマスクは、肺に有害とされるサイズの0.5~5㎛(マイクロメートル)よりさらに微細な0.1~0.3㎛というサイズで試験をしています。
フィルターが目詰まりすると呼吸が苦しくなってくるので、エアーでマメに清掃します。
最後に
特に、塗装鋼材やメッキ鋼材を溶接すると、工場内がたちまち真っ白に。
外気温が穏やで過ごしやすい時期は工場のシャッターは全開でいいのですが、雨の多い時期や冬場は工場のシャッターを全開にできないため、空気の循環をスムーズに行う工夫が必要です。
このマスクのフィルター、何週間前のだよ!
といった、周囲のメンバーとの温度差も大きな悩みどころではありますね…。
ついでに。
時折、youtubeやネット上の画像で簡易マスクで溶接しているのを見かけますが、あれは「短時間の溶接だから」という認識が必要です。
本来ならば、溶接時の防塵マスクは着用必須ですし、紫外線から肌を守るために夏場でも厚手の長袖で作業します。半袖とかホントあり得ない。←海外の溶接動画に多い
溶接の入り口が被覆アーク溶接だった私は、その溶接ヒュームの匂いがすると非常に懐かしいノスタルジーな気分になってしまい、造船所の敷地内にある他の工場で、ついつい保護マスクを外して匂いを嗅いでしまうんです。←軽くヤバい
ティグ溶接もいいんだけど、被覆アーク溶接の匂いは懐かしい、、、
ではではより良い溶接ライフを^^