Project-Tig

右手にトーチ 左手に期待値を

散歩に出かけたまま帰ってこない認知症の義母/60時間後の固定電話

同居している義母(80代)は、毎日散歩に行くのが日課です。自分の足で1本道をゆっくりと往復して約30分程度。

 

その日の朝も、いつも通り1人で散歩へ出かけたのですが、妻から連絡があり、「お昼になっても帰ってこないから、警察に電話したよ(汗」との事。

またかー。

 

以前にも2回、警察にお世話になった事がありました。2回ともに義父と一緒に帰る方向を間違えて、自宅から10㎞以上離れた場所で夜の9時頃に見つかりました。

その時に警察の方から言われた事は、「昼間の方が発見率が高いので、帰ってこなかったらすぐに警察に連絡してください」といった内容でした。

 

義父も認知症を患ってるので、こりゃGPSでも買わなきゃシャレにならないね、と妻と話をしていた矢先の1人散歩で行方不明。マジか~。義母の財布も家にあったし、手ぶらだろうな。

しかしながら、警察にも連絡してるし、夕方までには見つかるだろうと、この時はあまり深刻には考えてませんでた。

連絡が無いまま夜に

仕事を早上がりして、私も車で捜索に。昼から探し続けてる妻と、自宅を中心にいつもの散歩コースを念入りに探して回りました。

今思えば、この時やるべき事は闇雲に探すのではなく、近所の方々に事情を説明し、お義母さんの姿を見かけたかどうか確認する事だったかもしれません。

というのも、お義母さんが散歩する朝の時間帯には、庭の手入れ等をしてるご年配の方々が結構いらっしゃるようで、後から聞いた話では、そういえばその日は見かけなかった、という事が判明しました。

となるとお義母さんは家を出て、いつもの散歩コースには向かわず、別の方向へ向かった可能性が高くなります。これだけでも捜索範囲はかなり絞られたかなと今になって思います。

辺りが暗くなり始めた頃、ラジオからも捜索願い*1が流れましたが、これといった情報も無し。

なかなか喉を通らない夕飯を、無理やり押し込み、再度警察に連絡してみましたが、目撃情報すらありません。

 

季節の変わり目で夜は冷え込みます。

 

もし事故や事件に巻き込まれたなら、病院なり警察なりから連絡がある。それが無いということは、雑木林に迷い込んだか、未だに歩いてるかもしれない。どのみち、健脚なお婆ちゃんは元気だよ。と、心配する子供らに説明はしたものの、家族の不安は拭いきれません。

何も進展が無いまま、日付をまたぐ頃に家の灯りを消しました。

2日目

浅い眠りのまま夜が明け、子供らと一緒に今度は近所の雑木林を探すことに。車では気付かなかったことが、徒歩ならわかる事があるかもしれないと、一縷の望みをかけたものの、何の成果も上げられませんでした。

 

住宅街の裏手の雑木林には、人が入れそうな細い道が数箇所あるものの、太陽の光が届かずに薄暗いまま。いざ入口を目の前にすると、かなり不気味で、大人ですら躊躇してしまうほど抵抗感があります。何か余程の目的がない限り入ろうとは思いません。ここは違うだろう。

 

「もう1日以上経ってるよ。ヤバいよ!」と息子は急かしてきますが、スパッと解決するようなアプリなんかあるはずもなく、、、?

急かしてくるわりに、その手に持ってるSwitchは何かな?

 

まだ試してないものがあるとすれば、SNSくらいか。この片田舎のTwitterで果たしてどれ程の効果があるか...。

Twitterで捜索願いとか身バレのリスクしか、、、そんなこと言ってる余裕はない。お義母さんの本名と顔写真(妻承諾)を添えて、ポチ...

 

Twitterで認知症老人徘徊

SSメタルTwitterより

 

コワ! すっごい勢いでイイネが増えてくんだが。

コメントも続々と。

この時の優しいコメントや労りのコメントには、家族一同癒されました。市内のフォロワーさんも数名いらっしゃったので、探す人数の分母が少しは上がったはず、と言い聞かせて、再び捜索に向かいます。

 

しかし、何の進展もないまま、この日も日付をまたいでしまいます。もうマジで打つ手がない。

3日目 

Twitterのリツイートが200以上に膨らんだのを見て、子供たちがはしゃいでる。家の中が明るくなったのはこの時くらいかな。

 

やっぱり近所の雑木林の奥深くまで入ったのかもしれない…

朝からもう一度、捜索範囲を広げて歩く事にしましたが、出てくるのは溜め息ばかり。諦めてトボトボと家に戻る途中、反対方向から見慣れた人の姿が現れたんです。

 

Twitterで知ったよ

 

この地域に定住してから長い付き合いになるたった一人の友人が、来て、くれたんです。

 

マジか~

挫けそうになる中で、涙がジワジワと。おっとと。アブナイアブナイ。目に涙を浮かべてる場合ではない。

これまでの経緯と状況を歩きながら説明し終えたところで、友人からこんな提案が。

 

ビラ作るよ

 

ちょうど近所の方々へ訪ねて回ろうとしてたので(決断が遅い)、渡りに船。お義母さんの説明もしやすくなります。

個人情報をどこまで載せるか相談してから、友人は早速、ビラの制作に取り掛かってくれました。

 

出来上がったビラを妻に渡し、近所の町内会長さんの家へ。すると、そりゃ一大事だ、他人事ではないと言って、すぐさま近所の家々を町内会長さんが同行して回ってくれたそうです。

日が暮れ始めるころ、10軒近く回ってクタクタになった妻が帰ってきました。

話を聞くと、お義母さんの事を覚えてる、これまたご高齢のおばちゃんがいたらしく、「そういえば、その日からここ2日くらい見てないね」と、同じ話を3回繰り返したそうな。

って事は、いなくなった日は、いつもの散歩コースじゃなかったのかもしれません。やっぱりいなくなったらすぐに近所の捜索網を広げた方がいいみたい。

 

それと、この時知ったのですが、ほとんどのご家庭で認知症の深刻な問題を抱えているようで、中には真冬に失踪した次の日に、そのまま帰らぬ人となったエピソードを聞き、ご家族の事を思うと何ともやりきれない気持ちになります。

 

話に夢中になってると夕飯の時刻に。

 

お腹は空いてるけど、あまり食欲はないし、どうしよっか?と、その時、家の固定電話が突然鳴り響きました。ビクッ!

 

これはどっちの知らせだ?

 

普段は鳴らない固定電話。直感的に警察からの電話だろうことは予想出来ます。

電話に出た妻の声は、覚悟を決めていた厳しい口調だったのが、花が咲いたようなパァっと、いつもの優しさを含んだ声へと、表情へと、戻っていったのを今でも覚えています。

 

「お義母さんが見つかりました」と警察から連絡が来た瞬間でした。

 

とある民家の小屋に入ろうとしたところを通報されたと。

 

お義母さんが居た場所は、自宅から約25km離れた(←は?)山間部。車でおよそ20~30分(遠すぎっ)。道中、外灯もない真っ暗な山道がフツーに怖い。

 

衣服や帽子は汚れ、所持金は小銭が数枚。

 

冷えきっちるかもしれない、と手を握りましたが、温かかった。温かかったんです。ホント良かった。ほっとした。足取りもしっかりしてるし、大きな怪我は無さそう。

お義母さんは事の経緯の記憶が全く無く、気が付いたら警察の人と喋っていた、との事。空腹や喉の乾き、小雨の降る寒さ等の辛い記憶が無い事に、少しだけ安心しました。

 

何故25kmもの距離を歩けた?

何故その方向に向かった?

水や食料は?


本人にさえ分からない事に思案を巡らせる事に意味は無さそうですし、なにより失踪中、私達夫婦は食事も喉を通らず、仕事を休み夜も寝付けず寝不足気味。子供達も不安になり学校を休んで、近所を一緒に探して回る状態でした。

担任の先生にも事情を話して欠席してたので、余計なご心配をおかけしました。親戚にも電話しまくったな。

 

今回の一件で、ご近所や親戚と話した事で実感したんですが、私達家族が抱える認知症や老人徘徊、養護施設等の問題は、みんなが同じように抱えてるんですね。そして大っぴらには話したがらない。

 

にしても、もうクタクタ。こんな思いは二度としたくない。

 

何か早急に対策をしなければと、我が家では以前から検討していたGPSを購入したんです。

散歩に行く時にお義母さんが忘れては意味が無いので、あれこれ苦労はしましたが、見事、必ず持ってもらうことに成功しました。

 

GPSを買うのにハードルは低いんですが、これを常に持ち歩いてもらうには、いささかハードルが高くなる。認知症の老人がいる家族が持つ悩みの一つです。

 

いや〜〜、疲れた。

長くなるので、一旦ここで終わります。


次回は認知症のお義母さんにGPSを携帯してもらった方法と、GPSの性能の話になります。

では、また。

*1:脚警察の方から、ラジオ局に捜索願いの放送をお願いするか聞かれます