・自動溶接遮光溶接面はどれがいいのかわからない
・遮光ガラスは何色が見やすいの?
・1万円と5万円の溶接面では具体的に何が違うの?
と、疑問をお持ちの方の悩みを解消する記事になっています。
先日新しい溶接面を購入しようと、お世話になっている取引先に連絡しました。
すると先方から「お試し用の自動遮光溶接面があるので試してみませんか?」と、お話があり、4つの自動遮光溶接面を試す機会を頂いたのです。
ひとつの自動遮光溶接面につき、8時間以上使用しました。
この記事では、自動遮光溶接面を購入する際のポイントとなる、視認性、快適性、価格の3つを中心にしたレビューとなっております。
自動遮光溶接面とは?
非溶接時は色の付いたサングラス程度の明るさですが、溶接スタートと同時に溶接のアーク光を感知し一瞬で溶接用に暗くなります。
アーク光を感知して切り替わる速度が数千分の一秒から数万分の一秒ですから、眩しいと感じる間もありません。
左手がフリーになるので、ティグ溶接のような両手で行う作業では手動開閉の溶接面に比べて動きがスムーズになり、作業がスピーディーになります。
また液晶サイズが大きいため、溶接時、非溶接時の視認性が良く、今までよりも良好な溶接ビードが得られます。
今回の自動遮光溶接面使用時の溶接条件
作業環境
- 作業場所は工場屋内
- ステンレス鋼Tig溶接 平均電流200A
- 開先➪仮付け➪本溶接
- 溶接姿勢は下向き、上向き、横向き、縦向き、配管
- 当日の気温30℃以上(暑い)
- 溶接面ひとつあたり最低8時間使用
溶接者の特徴
- 年齢40代前半
- ティグ歴17年
- 視力左右0.5(メガネ無し)
- 老眼無し
- 乱視がエグイ
- 保護マスク装備
- 革製溶接面を10年以上愛用してるが、溶接面の隙間からアーク光が入ってくる事が気になる今日この頃
- 溶接頭巾に直接装着(ヘルメットしていません)
革製溶接面の特徴
まずはこちらの10年以上買い換えしながら愛用し続けている革製の溶接面から。
自動遮光溶接面ではなく手動で開閉するタイプです。
【製品名】コンビ面開閉金具付き
【遮光プレート色】 緑色
【ガラス寸法 縦✖横】 41mm×96mm
- 軽くてヘルメット作業に最適
- 溶接時に下からややアーク光が入ってくる
- 一年もしないうちにゴムが伸びて緩くなり、スポンジ部分も剥がれてくる
- ガラス寸法(41mm×96mm)が小さいため視界が狭い
自動遮光溶接面プレビュー
小池酸素工業 KADF-888 S
【遮光プレート色】 青色
【実測液晶寸法 縦×横】 87mm×96mm



- フィット感抜群。重さ、操作パネルなどの不便さは全くなし。
- 液晶画面(画像右)が薄い青色の為、非溶接時は非常に見易い。グラインダー作業、仮付けが非常に捗った。
- 画面の大きさ(87mm×96mm)も充分で閉塞感が全く無く解放感が抜群。
- 青色は初めてで違和感はあったが、慣れれば問題無し。光がやや拡散する。
- 価格が3万円未満は納得の価格。
リケン R-7000
【遮光プレート色】 黄色
【実測液晶寸法 縦✖横】 60mm×100mm



- 液晶は大きく快適。溶接時に光がやや拡散する。
- 非溶接時の遮光度が若干濃いためグラインダー作業、仮付けには不向き。
- フィット感、重さ、操作パネルなどの不便さは全くなし。
- 遮光調整ダイヤルが溶接面の外側にあるので、いつの間にか遮光度が変わっていた。
- 価格は一万円台と控えめ。
スピードグラス9100(デモ)
【遮光プレート色】 オレンジ色
【実測液晶寸法 縦✖横】 測り忘れ


- フィット感、重さ、操作パネルなどの不便さは全く無し
- 保護マスクをしてても画像⇧の赤丸のように奥行きが調整可能なので、全く問題無し
- 液晶画面の大きさは革製溶接面よりやや広いくらい
- 光の拡散が無いため見やすい。小池、リケンの液晶画面をハイビジョンテレビと例えるなら3Mスピードグラスの液晶は2Kといったところ。綺麗。
- アーク光が入ってこないので快適
- デモ機です(価格不明)
スピードグラス9100XXi
【遮光プレート色】 緑色
【実測液晶寸法 縦✖横】 73mm×107mm


- フィット感、重さ、操作パネルなどの不便さは全く無し
- 中央の液晶(73mm×107mm)と両サイドのパネルにより視界が広いため、面をかぶった瞬間感動します。
- 液晶画面の大きさは充分
- 溶接中はクリアな画像で溶け込みが分かりやすい。
- アーク光が入ってこないので快適
- 値段が高い
3Mスピードグラスは溶融池(プール)がダントツで綺麗に見ることが出来ます。
遮光プレートが黄色、緑と二種類ありましたが、一日使った疲労感はどちらも変わりありませんでした。
色に関しては個人の好みの問題になると思われます。
「ヘルメット着用厳守」は注意!
普段は、
「ヘルメット+革製溶接面=軽い」
で作業しています。
ここだけのヒソヒソ話ですが、【ヘルメット+自動遮光溶接面】を使用して作業したところ20分持ちませんでした。
ズシリと重さが首に来てギブアップ。この重さで一日フルに溶接しろといわれても躊躇します。
高性能の自動溶接面は基本的に、人の頭の形にフィットするように作られています。
わざわざアタッチメントを変えてヘルメット仕様にするのは非常にもったいない気分でため息が漏れました。
職場によってはヘルメット着用厳守の所もあるので、自動溶接面を購入する際に重さのチェックは必須です。
自動遮光溶接面を選ぶポイント
今まで経験したことが無かった、快適な溶接作業が実現できる自動遮光溶接面を選ぶ際のポイントは次の4つと思われます。
- 液晶が大きくて、光が拡散しない
- 液晶の色
- ホールド感
- 職場がヘルメット未着用OKか
10年ほど前の溶接面は工場の照明に反応して暗くなったり、投光器の明るさに反応して暗くなったりしたものでした。
しまいには隣で作業してる人の溶接に反応したりと使い勝手がイマイチでしたが、今では感度や遮光度は細かく調整可能なので、使用中の煩わしさはほとんど気になりませんでした。
年齢が40代前半ということもあり、一日フルで使用したとしても快適である事を念頭に選びたいものです。
最後に
今回、自動遮光溶接面を比較して実感したことは、3Mスピードグラスシリーズはやはりクリアで見やすいことです。
平付け溶接で『ビードが曲がってしまう』という方の悩みを、間違いなく解決するでしょう。
視認性、快適性からいえば小池酸素工業、リケンはコスパ的にも申し分ありません。具体的には80Aパイプを真下から真上までの180度を快適に溶接できます。
溶融池が見えず『平付けで溶接ビードが曲ってしまう』という方は『簡単に平付け溶接をレベルアップする方法』にも目を通してくださいね。
ではでは、より良い溶接ライフを!