若いときにJIS溶接試験で被覆アーク溶接の裏波を出す試験を一人で受けたときなんですけど、
本来はLB-52Uを使用しなければならないところを、 ほい、これ使って。 と渡されたのが「LB-52」。 U がついないけどいいんですか? と私。 ああ、これで大丈夫でしょ と会社の事務担当の人。そんなものかとその場はスルーしたんですが、その後の溶接試験で U が付いていないと裏波は絶対に出ないと身を持って体験したのでした。優しい試験官の方が あの人から借りたらいいよ とアドバイスしてくれて、名前も知らない職人さんに LB-52U を譲ってもらい、事なきを得ました。
裏波溶接する場合は、絶対LB-52Uを使いましょ!
さて本題の溶接棒の選定についてですが、全てをまとめると膨大な量になってしまい、ただの記号の羅列になってしまうので、ここではちょっと簡単に鋼材の種類による基本的な事を書き綴ります。
基本的な溶接棒の選定
母材の鋼種によって使用する溶接棒が決まっていて、基本的なパターンは以下の5つ。
①軟鋼(SS400)同士
②ステンレス同士
③アルミ同士
④軟鋼+ステンレス
⑤メッキ+ステンレス
①②③はそのままで、軟鋼用、ステンレス用、アルミ用(ティグ溶接、半自動溶接)の溶接棒、ワイヤを使用。④⑤は全く異なる鋼材同士の溶接です。
④軟鋼+ステンレス
軟鋼とステンレス304を溶接する場合、溶接棒はSUS309系を使います。
例えば、軟鋼とSUS304の溶接にはSUS309の溶接棒を。軟鋼とSUS316Lの溶接にはSUS309MOLの溶接棒を使用します。
⑤メッキ+ステンレス
メッキといっても軟鋼の表面にメッキ処理したものなので、④と同様になります。表面のメッキはグラインダーで削って溶接。造船所ではメッキ+ステンレスの製作ものがあり、メッキ部分を綺麗に削ればティグでも溶接可能です。
基本的にはこんな感じで、ここで一番注意することは指定された溶接棒、ワイヤのグレードを下げないことです。本来使用する溶接棒よりグレードを下げて溶接するとヤバイです。例えば316Lの母材に308Lの棒を使用すると、同じステンレスでも腐食への耐久力等に差があるので、後から「割れ」が入ったり溶接金属のみが「腐食」します。
車でいうところの、ハイオクなのに軽油をいれてしまうぐらいヤバイやつ。
ちなみに、304の母材に316Lの溶接棒は使用OK!
そして、溶接棒の混在を避けること。
溶接者は自分が何の溶接棒を使用しているのか絶対的な確信が必要です。混在して使用しないためにも必ず溶接棒の頭の色を確認して使います。