『溶接』の起源は遥か昔の紀元前の時代にまでさかのぼり、「ろう付け」から始まったといわれます。
その後、産業革命時代に「アーク」が発明され「アーク溶接(電気溶接)」の時代が続きました。「半自動溶接」、「ティグ溶接」に至ってはここ100年間で飛躍的に進化し、現在にまで至るとの事です、、、。
この業界に入ってそろそろ20年が経とうとしてますが、あんなカッチカチの金属が一瞬の パチンッ でくっつく溶接って何だか凄ぇなぁ、と今だに感心してしまう。考えた人天才だよ。
、、さて、私の薄っぺらい見識はこの辺にしてちょっとだけ本題へ。
溶接の主な三種類
一般的に「アーク溶接」といえば「棒(手)溶接」のことを指しますが、実は「アーク溶接」とは電気溶接全般の事を指すんです。
下記は、私の職場にある三種類の電気溶接方法です。
【被覆アーク溶接】
「棒溶接」や「手溶接」、ただ単に「アーク」などと呼ばれたりもしてます。
1990年代のフジテレビの月9ドラマ内で、TOKIOの長瀬智也くんがこの被覆アーク溶接を実践していました。
保護マスクしてないけど?てなふうに観てました
【炭酸ガスアーク溶接】は「半自動溶接」や「CO2」、「炭酸」などと呼ばれてます。
ワイヤの送りが自動で、トーチは手動なので「半分自動半分手動溶接」⇒長っ!半自動溶接で良くね?⇒「半自動」に決定!(多分)
ワイヤが自動で出てくるので、継ぎ目が少ない連続溶接が可能。初めてこの半自動の溶接スピードを体験した時は、被覆アーク溶接との違いにかなり驚き興奮しました。まさに神溶接機やん。中厚以上の溶接では無双です。
そして【ティグ溶接】は「ティグ」や「tig」、「アルゴン溶接」などと呼ばれます。
ワイヤもトーチも手動で、左右の手が同時に違う動きをしなければならないので、難易度は高く、パイプを溶接するとなると習得に数年かかります。
被覆アーク、半自動では溶接中に発生するスパッタの処理に、作業工程の3割ほど時間を必要とされるのに対し、ティグでは溶接中のスパッタに泣かされることもなく、それどころか溶接ビードが滑らかなのが特徴で、あまりの見た目の綺麗さに心奪われる人がいるとかいないとか。その分、溶接スピードは遅め。
溶接技術の用途は幅広く様々で、東京スカイツリーの鉄骨や再処理施設内の配管、病院の空調ダクト設備や造船所の船体ブロック等から、農作業具の修理や車両のマフラー等の部品、ガソリンスタンド地下の配管設備まで多岐にわたります。
私達の生活を豊かにするうえで欠かせない技術で、あまり日の目を見ることは無く、私も二十歳の頃、建設現場で初めて目にするまで溶接の存在には気付きもしませんでした。いまだに世間一般での認知度は低いのですが、溶接技術の真髄は奥が深く、時折挫折しそうになる時がたま~にありながらも、胸を張って人に語ることができる職です。
自分の溶接に心奪われる瞬間がすっかり減ってきてるので、最近ではスカイツリーの溶接ビード画像を見て興奮してます。柱のパイプに鋭角で入ってる小径パイプの接合部のビードがマジ卍でたまらんのです。
必要な資格は?
溶接技術者になるには何か特別な資格は必要だったかな?と思い出してみると、会社に入ってから「アーク溶接の特別教育」がありました。私が受講した当時は、半日程度の講習で18歳以上であれば、よほどの事が無い限り誰でも取得可能でしたが、今では一日で終わらないんですね…。
専門的な資格で「溶接資格」と検索してみると JIS溶接試験 が多く拝見されますが、造船所ではNK(日本海事協会)溶接資格が必要です。
どちらも溶接試験の目的はハッキリしていて、溶接金属の完全溶け込みが合格の基準です。
以前はJISのTN-P(パイプの裏波溶接資格)を持っていればNKでも通用しましたが、今ではカテゴリー分けされてるようで、NKはNKで試験を受けなければならず、JISの方はかなり前から更新試験を受けていません。
、、、そういえば昔の話ですが、そのJISの更新試験場で、一人の女性を見かけました。
ソフトモヒカンで、見た目が若く「中卒の男子かな?」と思ったんですが、なんと受験番号と名前を呼ぶときに「~子」でした。今でも印象に残っています。
ここ数年で女性の溶接工の方々の活躍が目立ってきたのは嬉しいことですね。
「溶接、健康」と検索すると、
しかし、ちょっと懸念されるのが「溶接作業の健康リスク」についての記事が、ネット上では少ないかなと個人的に感じています。
溶接中の紫外線やらヒュームやら、溶接を一日しただけで症状が出るものから、数年で腱鞘炎になったり、数十年間続けて症状が出てくるものがあります。また、溶接作業ではどんな危険が潜んでいるのか?等々、当溶接ブログ「Pro-Tig 」を通して、より多くの方にいいトコも悪いトコも知ってもらうキッカケになればいいなと思います。
え~、すっかり雑談になってしまったので長引かないうちにこの辺で。引き続きPro-Tigをお楽しみください。
ではでは。