一般的にステンレスの加工は鉄に比べて約3倍のコストがかかります。
その為、ステンレス専門の知識、工具、技術が揃っていないと、かなりの時間と労力の無駄遣いになってしまいます。
ドリルによる穴開けもその中の一つ。
以前、ステンレスのパイプに穴を開ける作業をしたときに、ドリル刃先の切れ味が悪くなったんです。
うろ覚えだったこともあり、再勉強を兼ねて「ドリルの研ぎ方」でネット検索すると、たくさんの動画が。
考えていたより簡単で、6mmを研ぐ場合1分もかかりませんでした。
お陰さまで今まで以上の切れ味&長持ちするドリルの研ぎ方が出来るようになりました。
m(_ _)m
そして、この「ドリルの研ぎ方」を検索する中で、鉄用とステン用のドリルがどれだけ長持ちするのか?といった疑問を持つようになりました。
はたして、
鉄とステンレス用ではドリルにどれ程の性能の違いがあるのか?
わからなければやってみよう!
今回は、ドリル対決!
鉄ドリルVSステンレスドリル
~ドリルはどれだけ長持ちするの?6㎜編~
- 1)準備したもの
- 2)鉄用ドリル1回目
- 3)ステンレス用ドリル1回目
- 4)鉄用ドリル2回目
- 5)ステンレス用ドリル2回目
- 6)【番外編】ドリル14㎜新品を研ぐ
- 7)14㎜の切れ味はいかに?
- 8)ドリルの研ぎ方
- 9)ボール盤で14㎜以上のドリルは注意!
- 10)ストレートドリルは取り付け不可
- 11)切削油は水溶性と油性どっち?
- 12)ボール盤の200V三相はここに注意!
1)準備したもの
ステンレスパイプ
100A #20 sus304 厚さ4.5㎜
ドリル
ステンレス用6㎜(右)
鉄用6㎜(左)
両方とも借りもので、動画の説明通りに私が研ぎ直したものです。
切削油(クーラント)
今回、初めて使います。油性に比べ冷却効果が高いとのことです。
ボール盤(日立製)
昭和の時代?から活躍すること数十年。
穴径は6㎜なので回転速度は二段階目です。
ポンチを打って、いよいよスタートォォ!
※ポンチを打つ場所は、パイプ内側のシーム(繋ぎ目)を避けるのがベストです。
2)鉄用ドリル1回目
さあ、まずは先攻の鉄用ドリルから。
果たして鉄用のドリルがステンレスパイプに、どこまで通用するのか?
ドリルをセッティングしてゆっくりとハンドルを下げていきます。
、、、
、、、
、が、しかし、
ドリルがこれ以上入っていきません。
無理に押し付けても切粉が出ず、煙が出るばかり。
切削油を多めにかけましたが、ドリルの先端近くが熱で変色しています。これ以上続けるとドリルもステンレスパイプも悪くするので、ここで断念。
なんと、結果は
まさかの0本!
3)ステンレス用ドリル1回目
さあ、気を取り直して後攻のステンレス用ドリル。
鉄用ドリルでは全く歯が立たちませんでしたが、YouTube産ドリルの研ぎ方の威力はいかに?
うほっ💕
手応えがまるで無いような軽い切れ味!
最初から最後まで引っ掛かりも無ければ、キィキィと音が鳴ることもありません。
この調子でサクサク開けること10本。
一旦、ドリルの先端を確認。
少し刃が欠けています。
これ以上欠けると研ぐ量が増えるので、一旦研ぎ直しへ。
4)鉄用ドリル2回目
ステンレス用のドリルでは自分の研ぎ方が悪くなかったことが証明出来たので、再び鉄用のドリルでステンレスパイプに挑戦。
念のため、もう一度研ぎ直しを。
今度は上手く、、、い、、
、、いかない!
やっぱりあかん!
結果0本!
5)ステンレス用ドリル2回目
ここで新品のドリル到着!万が一に備え、朝一に注文しておいたステンレス用ドリルが届きました。
お忙しい中でも、急な注文に神対応してくれた市内にある資材屋さん。
ありがとうございます❗
さあ、新品の切れ味はいかに?
うん?
穴は開きましたが、自分で研いだものに比べ手応えが重く感じられました。数本開けても変わらない感想だったので、新品のドリルを研ぐことに。
すると、やっぱり!
自分で研いだドリルの手応えが軽い!
まさか新品を研ぐと切れ味が良くなるとは思っていなかったので、新しい発見です。
この自分で研いだドリル。
結果は、ステンレス材約4.5㎜の厚さを連続で開けた本数は20本でした。
穴を開けるときに一番負荷がかかるのは、貫通した直後なんですが、「カリッ」と引っ掛かかる気配もありません。
こうなると穴開けが楽しい楽しい!
【【~結果発表~】】
鉄用ドリル0本
ステン用ドリル20本
という結果になりました!
ステンレス材に穴を開ける時は、ステンレス用のドリルが必須ということですね。
6)【番外編】ドリル14㎜新品を研ぐ
6㎜の穴は下穴で、最終的には14㎜の穴にします。
新品の14㎜でも問題なく切れたのですが、6㎜では新品を研いだ方が切れることがわかったので、思いきって14㎜の新品を研ぐことにしました。
新品の14㎜を…、
もったいないとぶらずに、
砥石で研磨。
シンニングも少々。
シンニングとは切粉を逃がすための溝の事で、ドリルを長持ちさせる効果もあるそうです。
それでは早速、研ぎたてホヤホヤのドリルでイってみましょう!
7)14㎜の切れ味はいかに?
ウキョーー
ウキョキョキョキョーーー
ヾ(o≧∀≦o)ノ゙
豆腐か?ワタシは豆腐にドリルを刺しているのか?
切れる吸い付く憧れるぅ~
始めから終わりまで切粉が途切れず、一本に繋がるほどの切れ味は、仕事を忘れてどんどん穴開けをしたくなる程。
こんなに長い切粉は初めてです^^
8)ドリルの研ぎ方
今回参考にさせていただいた動画がコチラです。
2分頃~ドリルを一度平にしてから研いでいるので、とても分かりやすいです
動画の通りに、やや回しながら上に持ち上げれば綺麗に研げますが、その他のポイントも押さえておきましょう。
ドリル研ぎ方
①刃先の角度、距離を揃える
②逃がし角度は水平よりやや下げる
③シンニングを忘れずに
①刃先の角度、距離を揃える
刃先の角度は118度とありましたが、目視でも充分です。
目視でわからないときは間に合わせの定規を
②逃がし角度は水平よりやや下げる
③シンニングを忘れずに
9)ボール盤で14㎜以上のドリルは注意!
ボール盤に付いているチャックは13㎜以下のドリルまでしか取り付け出来ません。
14㎜を取り付ける時は、テーパーシャンクドリル14㎜とスリーブを準備します。
こちらが「テーパーシャンク」と表記されているドリルで、
ドリル頭部がやや細くなっています。
このままでは使えませんので、ドリルにスリーブを取り付けます。
こちらがスリーブ。
サイズが様々ありますが、トラスコ製の焼き入れMT1×M2
(品番TDS-12Y)
こうすることでボール盤に取り付け可能です。
10)ストレートドリルは取り付け不可
14㎜のストレートドリルは頭部まで真っ直ぐに14㎜径で出来ているため、チャックを全開にしても入りません。
画像上の「ストレートシャンク」と表記しているドリルは、使用する場合は注意が必要です。
11)切削油は水溶性と油性どっち?
今までの切削油はタッピングスプレーを使っていました。使用時の煙が多く使用後の油膜を除去する工程が以外と手間でした。
一方、冒頭で紹介した水溶性のコスモクリーンクールは、使用時の煙が少なく使用後の処理も時間は今までの半分になりました。
使用方法は簡単で、原液を10~30倍の水で薄めるだけ。
原液は麦茶色してますが、水で薄めると白い乳白色になります。水溶性なだけにサラサラして使いやすいのが特徴です。
12)ボール盤の200V三相はここに注意!
今回の穴開け作業において、他の工場からボール盤を借りて行いました。
まずは試し開けと思い何度かトライするもドリルが入っていきません。
細かい切粉が出るばかり…。
ステンレスだから?と思い、軟鋼を試すも煙が出るばかり。
ここまでくると何か根本的なことが合っていない事が多いのですが、それが何かわからずにモヤモヤしていました。
、、、と何気にチャックを見てみると、
逆回転していましたW
200V三相では配線が間違っているとモーターが逆回転します。
マルチワーカーや出前温風機などの「逆相」ランプ付いているものは赤いランプが光るので分かりやすいのですが、ボール盤や送風機などのモーターは逆回転してしまうので要注意です。
そりゃ開くわけねぇ!
【対処法】
分電盤の配線三本(赤、白、黒)の内、どれでもいいので二本を入れ替えれば正転します。
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