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ステンレス薄板と厚板の溶接のポイントって、、、なんだっけ?

久しぶりに薄板の溶接をしました。

 厚さ2㎜のステンレス板をティグ溶接で箱ものを製作し、さらには、径22㎜もある取手をつける、といった感じです。
どんな設計だ?

薄板の箱もの溶接、更に薄板と厚板の溶接って何年ぶりだろ、、、

 

 というわけで、今回は忘れてしまっているステンレス「薄板と厚板」の溶接のポイントをおさらいしながら、まとめていきたいと思います。 

薄板、中板、厚板の分類

 一般的に、厚さ6mm以上のものを「厚板」、3mmから6mm未満を「中板」、3mm未満のものを「薄板」、として区分しているようです。

 ちなみに造船所で行われているNK溶接試験では、板厚9㎜は薄板に分類されていますので、ややこしいですね。 

いっぺん、練習してみる?

まず練習用に準備したのは、二種類のステンレス板。

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作業台がステンレスなので見にくいかもしれません。

 

いたって普通に、なんも考えずに溶接してみます。

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【練習用、溶接条件①】

ステンレス板6㎜と2㎜
150A 連続すみ肉溶接
溶接棒Φ2.0㎜(肉盛りの指示)

 

普通に溶接出来た感じはありますが、裏側を見てみると、

ステンレス薄板溶接酸化


見事に酸化したビードが誕生。

 

 実は、ステンレス薄板の溶接が嫌われる原因は、この裏側の酸化なんです。
 もとは違う班で制作してたらしいのですが、裏側に酸化のイボイボが出過ぎて、どうにもこうにもうまくいかない為、私のところに薄板溶接の依頼が来たようです。

 

 普段やらない仕事ってワクワクするんですよね。

 

 ステンレス薄板の溶接方法は、パッと思いつくのが3つあって、

  • 電流を弱くして連続溶接
  • 電流をやや強くしてアークを切りながら断続的に溶接
  • パルス溶接

と、こんなところ。

 

 2㎜の薄板であれば、溶接棒を使用せず、電流を弱くして連続溶接すれば良かったのですが、今回は肉盛りを指示されたので、電流をやや強くして断続的に溶接していく方法を選びました。

 

おっと。話が逸れてしまいました。練習用の溶接の話しに戻りますね。

 

 今度は裏側の酸化イボイボを出さないように、意識しながら試し溶接。

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溶接条件は①と同じ。

酸化イボイボを出さないように、溶接スピードを速くしてみます。


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さて、裏側はどうかな?

 

裏側を見てみると、

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う~ん、、、

ちょっとでも、溶接中にもたついてしまうと、酸化したイボイボが顔を覗かせます。

 

酸化のイボイボ対策

 今度は、溶接部に裏板をあてがい、熱を逃がし、溶接による入熱量を下げる方法を選択してみました。

 在り合わせの9㎜のステンレス板を裏側に密着させ、溶接します。溶接電流は条件①と同じ、150Aです。

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万力でガッチリと密着させてから、溶接します。

 

はい🎵
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裏側を見てみると、

 

はいはい🎵

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良いですね!

 

ステンレス薄板溶接


 薄板の連続溶接で、裏側の酸化のイボイボが出ないようであれば、本番ではアークを切りながら断続的に溶接しても大丈夫でしょう。

 

 ほぼ感覚は掴めたので、次回はいよいよ本番に入ります。

 

 

 

、、、

 

 

 

 

と、思ったのですが、

使える画像が、あまりないのでこのまま続けますね。

【溶接条件】

  • ステンレス薄板2㎜とステンレス丸棒22㎜
  • 溶接電流150A
  • アークを切りながら断続的に溶接
  • 溶接棒2㎜
  • 裏板をあてがう

 

アークを切りながら断続的に溶接というのは、アークを切った際に、下の画像のように、肉眼で見たオレンジの光がしぼんで消えた時に、再びスイッチを押す、の連続で溶接を進めることです。

ステンレス薄板溶接

めっちゃ根気が必要です。

 

 万力を数個使用して、9㎜のステンレス板を裏側にあてがいながら、いざ、溶接!

 

そして出来上がり。

ステンレス薄板溶接


う~ん。一発目から上手く付けれないなぁ

 

 

気を取り直して、ほい🎵

ステンレス薄板溶接

こんな感じか。角度的にも綺麗に撮れた一枚。裏側の酸化イボイボも出ること無く、無事に完了。

 

 というわけで、ステンレスの薄板と厚板の溶接では、裏板をあてがった方法が、かなり有効でした。

 次回もステンレス薄板溶接続きます。 

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