仮付けも終わり、いよいよ溶接をする段階に来ました。
薄板の箱もの溶接では、歪みの影響を受けないのであれば、というか、溶接全般に言えることなんですが、溶接しにくい内側から始めるのが基本です。
しかし、ここで、
「せっかくの薄板溶接だから、違った角度からのアプローチで溶接した方が、ブログの記事にできるかもよ。フフフ。」
『、、、なるほどぉ!良いこと言うじゃん。』
と、心の中のブラックめたるに、ブログのためとはいえ、魂を簡単に売り飛ばす私。渋々、というのは真っ赤な嘘で、喜々として外側から溶接することにしました。エヘ。
作業性を考えれば、内側から溶接した方がいいのですが、ま、とりあえずやってみましょう。
※例により、画像の一部しか掲載できませんので、ご了承ください。
箱モノの外側溶接?内側溶接?
「箱もの」というのは、その名の通りダンボール箱のような形で、一枚の板をコの字に曲げ、両側を板でふさいだものです。箱の外側は角継手(かどつぎて)溶接となり、内側は、すみ肉溶接となります。
【外側から溶接条件】
- ステンレス薄板2㎜角継手(かどつぎて)
- 溶接電流140A
- アークを切りながら断続的に溶接
- 溶接棒なし
溶接始まりは外側センター付近からで、入熱量が過多にならないよう、両サイドに10㎝ほど交互に進んで行くことにしました。
外側角継手の溶接
片方を溶接したら、反対方向を溶接、という具合に徐々に進んでいきます。
外側を溶接してから内側を見ると、所々に酸化のイボイボがウニょっと飛び出てる。
進むペースが早すぎた、、、
この次の行程は内側の溶接なので、溶け込みを邪魔する酸化のイボイボを、グラインダーの切断刃でカリカリ。。。
切断刃の厚さは1㎜なので、こういう細かい箇所を削るのには便利です。
酸化箇所を除去してから、内側の溶接を始めます。
この程度⇩なら、内側の溶接に支障はないので一安心。とはいえ、せっかちな私が溶接スピードを抑えて進むのには、かなりの忍耐力が必要でした。
溶接熱により、特に歪むことがないようなので(見た感じ)、外側一辺20㎝を溶接してから、内側一辺を溶接する方法に切り替えました。
次は内側を溶接。
【内側溶接条件】
- ステンレス薄板2㎜すみ肉
- 溶接電流140A
- アークを切りながら断続的に溶接
- 溶接棒 Φ2.0㎜(肉盛り指示)
外側を溶接した際の影響なのか、溶け込みがだいぶ鈍くなっています。スムーズに「トクン」と溶けてくれない。かまわずに進んでいきます。
内側溶接完了後に、外側を確認してみると、
おっ!良さげ。
と思ったのも束の間、グラインダーで溶接焼け(色の付いた箇所)を取ると、
良く見たら、
凹みぃ~~
内側を溶接した際に、進むスピードが早く、余計な熱が加わったようです。
ここにも。
薄板溶接の難しさは、こういうところなんだよなぁ。
溶接棒で埋めてから、
グラインダーをかけて補修完了。
内側の溶接と、外側の溶接。どちらが簡単かといえば外側の溶接です。内側はスペースが狭く、特にコーナー部分は見えないため、まあまあ、やりにくい。
歪みの影響を受けないのであれば、溶接の順番として適切なのは、「やりにくい方から溶接する」のがベターですね。
また、アークを切りながら断続的に溶接していく作業が、非常~~~に、眠い!
パチッ、、、パチッ、、、パチッ、、、という単調なリズムの連続で、始めは集中してたのが、何十回と繰り返すうちに段々と、
ウトウト、ウトウト、、、zzz
まぶたが意思とは関係なく下がってくるんです。
先日、読者の方から、
『この画像は自分が溶接したものなんですが、SSめたるさんから見て、いかがでしょうか?』といった内容のメールが届いたんですよ。
磨きのかかった綺麗なステンレス薄板を溶接したものでした。その溶接がですね、めっちゃ綺麗なんですよ。溶接ビード一枚一枚が定規で測ったように等間隔で、余程の技術と集中力がなければ、出来ない仕事ぶり。思わず、ウットリ見とれてしまいました。
ティグ溶接を初めて一年半ぐらい、と教えていただき驚きましたが、薄板溶接でその域に至るまでの過程を想うと、言い表せないほどの努力があったんだろうなと感心します。私なんかは、まだまだですね。
!!!
ここまで書いて気付いてしまったんですが、メールを送ってきてくれた彼が、今回の薄板溶接の画像を見たら、私がそんなに上手くないのがバレちゃいますね。背伸びしてもしょうがないので、これはこれで、ま、いいか。
ダラダラ書いてしまいましたが、薄板溶接を生業としてる方々は、集中力と忍耐の継続が半端ないッ!ということが今回の薄板溶接で良くわかりました。
「何でパルス使わないの?」
といったご意見も、あると思いますが、パルス編はまた別の機会に更新する予定です。
さて、次回の薄板溶接は「内側から溶接」になります。