溶接技術において重視すべき項目の中に、「溶接金属の一体化」が挙げられます。
溶接により金属と金属が完全に溶け込んで、強度や耐久性を向上させます。
ただ、
溶接の溶け込み深さって分かりにくい…
どんなに外観が素晴らしいビードでも金属の中が溶けていなければ構造的に溶接欠陥となり、検査結果は満足しないものに。
見ただけでわかる
今回は、目では見ることのできない溶接の奥の奥を、感覚としてしっかりと自分のモノにするための一歩を紹介します。
「なんだ、こんなことか。」
って思うくらい、とても簡単なことなので誰にでもできちゃいます。
でも、こんなことを検索しても分かりやすいサイトが出てこないってのは、私の検索の仕方が悪いのかな?
(欲しい情報が出てこない💦)
なので、少しでも分かりやすいように作ってみました。
画像はすべてSUS316L(サスさんいちろくエル)です。
JIS溶接試験とは?
JWES(日本溶接協会)が定める溶接技能者の資格に「JIS溶接試験」と呼ばれるものがあり、これに合格していると従事できる仕事の幅が一気に広がります。
試験の種類も多岐にわたり、難易度も様々。
また、会社によっては給料アップに繋がる重要な資格なので皆必死。合格後も3年ごとに更新試験がある。
詳しくはこちらから。
なぜ溶け込み深さを意識するのか?
試験結果の合否に影響するからです。
というのもJIS溶接試験合否判定は外観及び曲げ試験となっていて、曲げ試験では、不完全溶け込みだと割れの原因となり、不合格になる場合があるからです。
カテゴリが違いますが、造船内でのNK溶接試験(日本海事協会)では、一層目の溶け込み不足で不合格になる場合が圧倒的に多いです。
目に見えない溶け込み深さがわかる方法
ここからが今回のポイントです。
練習用ピースの製作
余ってる鋼材でいいのですが、バンドソーで切断可能な幅の鋼材を使用しましょう。
仮付け
本溶接
切断
サンドペーパーで磨くと見やすくなります。
例① 溶けている状態
溶接部と母材との間に隙間がありません。
部分溶け込みといいます。
例② 溶けていない状態
〇に注目!
溶接部分と鋼材との間に隙間が見えます。
奥まで溶けていないのが一目瞭然。
溶け込み不良です。
脚長が大きくなると尚更です。
溶接中に溶け込みの感覚がわかれば、より確かな技術の習得に繋がります。
例③ 半自動溶接
コチラは隙間がなく、溶け込んでる状態。
※画像は全てSUS316Lです。
最後に
私が過去に美しすぎる溶接ビードはいかがですか?をアップしましたが、これは外観的なこと。
外観も大事な要素ではありますが、溶接の本質は溶け込みにあります。
強度はもちろん、金属疲労や耐圧、腐蝕等の厳しい環境下で長期間品質を維持するには、溶け込みは欠かせない要素です。
それに、もうずいぶん前だけど、初めて行った溶接試験会場は、ゼッケンを着けたり、いつものトーチと違ったりで緊張してしまった記憶しかない。
(もうガチガチ💦)
溶けてるかな? ではダメ。
溶けてるだろう では、やや不安が残ります。
私の経験上では オッシャ。溶けてる!
という自信が、溶接試験本番では必要なこと。
今回紹介したのは特別難しいことではありません。ちょっとやってみようの好奇心で誰でも簡単にできちゃいます。
なので、溶け込み深さを手頃に確認する方法と覚えてもらえればOKかと。
「今、いい状態で溶けているぞ!」
と自信を持って溶接したいですよね。
溶け込み深さは数をこなせば感覚的に掴めることなので、JIS溶接試験合格を目指している方は、是非とも溶け込みを普段から意識して溶接してみてください。
ではでは、より良い溶接ライフを!